日本で事業を設立する際の留意点:合同会社と株式会社のどちらを設立すべきか?
メキシコ弁護士
TNV Law & Consulting
日本弁護士
真和総合法律事務所/TNV Law & Consulting
日本で事業拠点を設立しようとする起業家や外国企業が、まず検討すべき事項の一つが、「株式会社(Kabushiki Kaisha:KK)」と「合同会社(Godo Kaisha:GK)」のいずれを選択するかという点です。 この最初の選択は、その後の会社の事業運営や発展に大きな影響を及ぼす可能性があります。
本稿では、設立に要する費用や期間、ビザ申請、法人口座の開設、コーポレート・ガバナンスや事業運営の柔軟性、日本市場における会社の信用力や評価など、複数の実務的な観点から株式会社と合同会社を比較します。
メキシコやその他のラテンアメリカ諸国にも、可変資本株式会社(Sociedad Anónima de Capital Variable:S.A. de C.V.)や有限責任会社(Sociedad de Responsabilidad Limitada:S. de R.L.)など、複数の会社形態が存在します。一見すると、これらはそれぞれ日本の株式会社や合同会社と類似しているように見えるかもしれません。もっとも、一定の共通点がある一方で、法的構造、コーポレート・ガバナンス、実務上の利用方法には相違もあります。
そこで、本稿では、日本で会社の設立を検討する外国投資家が理解しておくべき事項を中心に、日本とメキシコの会社形態における主な共通点と相違点についても取り上げます。

日本における主な事業拠点の形態とその相違点
企業が日本に事業拠点を設ける方法には、いくつかの選択肢があります。代表的なものは、以下のとおりです。
1)新たな会社を設立しない場合
A)駐在員事務所(事業活動を行うことはできません)
B)外国会社の日本支店
2)会社を設立する場合
A)株式会社
B)合同会社
上記の会社形態の主な相違点は、以下のとおりです。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
資本金 | 1円以上 | 1円以上 |
出資者数 | 1名以上 | 1名以上 |
設立時の定款認証 | 必要 | 不要 |
債権者に対する株主・社員の責任 | 出資額を限度とする有限責任 | 出資額を限度とする有限責任 |
株式・持分の譲渡 | 原則として株式は自由に譲渡可能。定款により株式譲渡について取締役会の承認を必要とすることが可能 | 持分の譲渡には原則として社員全員の承認が必要 |
必要な役員等 | 少なくとも1名の代表取締役が必要 | 原則として社員全員が業務執行社員となるが、定款に別段の定めを置くことが可能 |
定時株主総会 | 原則として毎年開催する必要がある | 不要 |
株式の公開募集 | 可能 | 不可 |
利益・損失の配分 | 持株比率に応じて配分 | 定款に定めることにより、出資比率と異なる割合で配分することが可能 |
税金 | 法人の利益および株主に配分された利益に基づいて課税 | 会社の利益および社員に配分された利益に基づいて課税 |
株式会社と合同会社を選択する際の実務上の検討事項
従来、多くの会社は株式会社として設立されてきました。そのため、一般に株式会社の方が社会的な信用力が高く、銀行からも選好される傾向があります。
一方、近年では、複数の米国テクノロジー企業を含め、合同会社として設立される企業も増加しています。
会社法上は一定の制度や仕組みが認められていても、実務上の運用が必ずしもこれと一致するとは限らない点には注意が必要です。例えば、以下のような点が挙げられます。
1) 会社法上、会社は資本金1円で設立することが可能です。しかし、実務上は、その他の事情によって必要となる当初資本金の額が左右される場合があります。
その一つが、ビザを必要とする外国人従業員の雇用です。会社が外国人を雇用しようとする場合には、ビザのスポンサーとなるために必要な最低資本金を確保する必要があります。
2) 会社法上、代表取締役が日本国内に居住していることは求められていません。
もっとも、実務上、取締役が日本に居住していない会社について銀行口座を開設することは、相当に困難となる場合があります。金融機関が一般に、厳格なマネー・ローンダリング対策や本人確認手続を実施しているためです。
株式会社とメキシコの株式会社との比較
日本の株式会社は、メキシコの可変資本株式会社と類似しているように見える場合がありますが、両者にはいくつかの相違点があります。主な相違点は、以下のとおりです。
1) その名称が示すとおり、日本の株式会社は可変資本制度を採用していません。すなわち、会社の資本金額は定款に記載された額となります。この額を変更することは可能ですが、その場合には、法令に定められた手続に従って変更登記を行う必要があります。
2) 日本では、株式会社を1名の株主のみで設立することができますが、メキシコの株式会社では少なくとも2名の株主が必要です。
3) 日本では、株式会社は年1回、その財務状況を公示することが求められています。これに対し、メキシコの株式会社には、このような義務はありません。
クロスボーダーでの会社設立における実務上の課題
以上のように、会社形態が一見すると馴染みのあるものに見えても、それぞれの法制度には固有の特徴があります。また、法的要件自体が明確であっても、実際の手続は、国ごとの実務上の微妙な違いによって左右されることがあります。
私たちは最近、東京で事業を拡大しようとしていた企業に対して助言を行いました。登記手続の過程で、その会社は、メキシコ本社の住所を証明する認証済みの資料を提出する必要がありました。依頼者は、メキシコにおいて標準的で、法的にも認められているコンプライアンス関連書類を提出しました。
しかし、書式上の厳格な相違や硬直的な確認手続により、日本の関係機関はその住所証明を受理しませんでした。このような行政手続上のボトルネックを把握した私たちのチームは、両国の法実務の間にあるギャップを埋めるために対応しました。日本の関係機関が外国の書類をどのように解釈するのかを正確に把握することにより、それ以上の遅延を生じさせることなく、登記手続を無事に完了することができました。
結論
以上の通り、会社を設立する前には、本稿で説明した相違点を十分に理解するとともに、それぞれのニーズに応じた円滑な手続を進めるために必要となる書類について、専門家の助言を得ることが望まれます。
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